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山崎亮の「つながりのデザイン。」

#5 地域で出会った人々 — 議員になった人たち ー

香川県観音寺市の中心市街地でコミュニティデザインに携わったことがある。主に商店街で店を持つ方々が集まったワークショップでは、どうやって中心市街地を魅力的な場にするかが話し合われた。市内に住んだり働いたりする人たちにとって、これからの中心市街地はどんな役割を担うべきなのか、商店主はどんなことに取り組むべきなのかなどを、時代の変化などを踏まえて検討した。

その結果、自分の店を持ちたいと思う人が既存店の空間を部分的に借りて出店できる「ショップ・イン・ショップ」というプロジェクトが始まった。これまで経営を経験したことがない人が出店してもいい。会社に勤めている人が趣味の店を出店してもいい。郊外に住む人でも農村部に住む人でも出店できる。これからの中心市街地は、市内に住む人たちが自分の店を持ち、そこで趣味や興味が似た人たちと出会い、人と人とがつながり、何かが生まれる場所になる。そんな考え方に賛同した店主たちが、自分の店の一部を市民に貸し出すことを決めた。

ワークショップの途中で参加者のひとりから、「市議会議員が中心市街地に予算を付けすぎではないかと指摘しているらしい」という話が出た。郊外や農村部から選出された議員たちが指摘しているようだ。ワークショップ参加者たちは、「中心市街地で実施されるショップ・イン・ショップは、郊外や農村部に住む人たちも出店できるプロジェクト。つまり、市内全体を対象としたプロジェクトなのだ。なぜそれが理解できないのか」と憤った。なかには、理解できていない議員を探し出し、自分が直接説明しに行きたいと言う人までいた。

確かに中心市街地活性化という事業は理解されにくい。「中心市街地=商店街」と思い込んでいる人が多いからだ。そう考えてしまうと、中心市街地活性化は商店街活性化ということになり、「個店の経営努力が原則なのに、なぜ行政が応援するのか」という話になってしまう。しかし、中心市街地とは文字どおり、「中心にある市街地」である。必ずしも商店街である必要はない。たまたま少し前の時代まで、そこに商店が集合しているのが求められたから、商店街だった地域が多いだけのことだ。

高齢者が増える時代には、中心市街地が医療モールに変わっていってもいい。あるいは健康維持のためのレクリエーション空間や公園に変わっていってもいい。人と人とが出会うサロン空間になっていってもいい。いずれにしても、まだ商店がいくつか存在する今は、商店主が次の時代を見据えて中心市街地の役割を少しずつ変えていく必要がある。観音寺市のワークショップでは、中心市街地がサロン的な空間になることが理想だと考えたから、店主の協力を得ながらショップ・イン・ショップを始めるに至った。市内に住む人たちが集まり、自分の趣味や特技を活かして人と出会い、つながる場所。農地に集まってもいいし、郊外住宅地に集まってもいいが、歴史的な経緯も踏まえて考えれば中心市街地に集まるのがいいのではないか。そんな考え方である。

ある日、いつもどおり観音寺のワークショップに行ってみると参加者たちが盛り上がっていた。どうやら一人の商店主が市議会議員選挙に立候補し、中心市街地の重要性を議会で直接説明すると決意したらしい。そうなるとワークショップ参加者というのは頼もしい。もともと地域の重要人物だった人が参加していたこともあり、あっという間に強力な応援体制が整い、店主は無事当選を果たした。その人は先日、二期目も当選し、中心市街地だけでなくさまざまな政策について提案を続けている。

新潟県十日町市でもワークショップの参加者が市議会議員になっている。まちの未来を仲間たちと話し合い、それを実現していこうとするとき、実際にまちで活動する人もいれば、議員になって政策を変えていこうとする人もいる。ワークショップは、そうやって実際に動き出す人たちとの長い対話や実践を通じて、強力な応援者を生み出す場でもあるのだろう。

PROFILE

山崎亮

1973年生まれ、愛知県出身。コミュニティデザイナー。studio-L代表。東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)。慶応義塾大学特別招聘教授。 大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。著書に『ふるさとを元気にする仕事(ちくまプリマー新書)』、『コミュニティデザインの源流(太田出版)』、『縮充する日本(PHP新書)』など。

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