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新しい表現に挑戦したい。だからチームで動く。【後編】

Media Concierge Inc. × 自由廊

独自性の高い企画やディレクションで、アンビエント領域の広告コミュニケーションを切り拓いてきた「Media Concierge Inc.」。「イタズラ好きなんです。だから多くの人を驚かせたい」。こんな風に話す同社代表の大谷昭徳さん(写真・左)の扱うフィールドは多岐にわたり、なるほど記憶に残るものが多い。こんな話を受け、「自由廊」のJIROさん(同・右)からは、「造形物に関してはイメージできるものは作れる。作ろうと苦心します(笑)」。特殊メイクや造形制作に長年携わる彼は、業界の第一人者でもある。ふたりは出会って10数年。常識では考えづらいオファーをそれぞれの領域で形にし、数々のプロジェクトで世間を驚かせてきた。インタビュー後編では、クリエイティビティを生かした仕事のつくり方について聞いた。

ーーフォロワー数は10万人超。Instagramでも、新しい表現を追求した独創的ペイント作品を発表しているJIROさん。創作のモチベーションについてお聞かせください。

JIROさん:僕は東京芸大に行っていたのですが、アートの道ってよく分からなかったんですよね。自分自身をどんどん追求していって、深いテーマについて考えないといけないような空気で。そんなことよりも「ワッ!」と驚かせ、「ギャッ!」と反応してもらえるような即興性のある感動のほうが見ていて楽しいし、僕自身も感動できるという理由で、卒業後に代アニ(代々木アニメーション学院)に通い、特殊メイクを学んだんです。今もその思いは変わらず、筆で絵を描くという誰でもできる行為を用いた表現で、驚いてもらえる作品制作を続けてるんです。だってほら、作品を見た人たちが驚く姿って楽しいじゃないですか。

ーー(前編を含めて)二人の話を聞いていると、どちらもイタズラ好きで、人を驚かせることを本気でやっている大人、という感じがます。

大谷さん:その道の一線で勝負するには、人がやったことないことをやらないと勝負にならないし、そもそも人と同じことをやっても面白くない(笑)

JIROさん:大谷さんと知り合って、アイデアを仕事にしているというところが羨ましいと思ったんです。例えば、こういう「BIGりする男」のようなリアルなマネキンは、従来はゴムやウレタンのようなソフトな素材で作るのが常識だった。ただそれを固い素材で作ったとしても、色付けの表現次第で柔らかい皮膚に見えるんじゃないかと思って。そういうアイデアを出して新しいものを生み出す仕事が、僕の中では刺激になっていますね。

大谷さん:JIROは、本当にアーティストなんです。でももしかすると、いわゆるアーティストだとしたら食べていけなかったのかも。美大や専門学校で学んだ若い人たちからしたら、JIROの仕事のつくり方は良いお手本になるんじゃないかな。学校を出て、いきなりアトリエを構えて、まったく食べれない時期を経て、当時日本で市民権を得ていない特殊メイクの世界をサバイブし、業界の第一人者になったわけだから。すごいよ。

JIROさん:たしかに当時、ガス代が払えなかった(笑)。ターニングポイントがあるとすれば、特殊メイク=映画という文法ではなく、どんどん違う領域に興味を持ったことですね。「こういうもの作れる?」って聞かれたら、「できます」って言い切っちゃう。ヘアーショーの仕事をしたり、プロレスのコスチュームデザインを作ったり、それはもういろいろと。その頃、大谷さんと知り合い、気がつけば今は屋外広告の造形物を一緒に作ったり。人との出会い、つながりで押し上げてもらいました。

ーー大谷さんもJIROさんも、それぞれ独自の個性をお持ちで一人でも仕事ができそうです。なぜ会社を興したのでしょうか。

大谷さん:一人でやっているのがダサいって思う時期があって。社員を雇って給料を払ったり、人を育てたりすることを放棄しているのって超ダサいなって思っていたんですよ。それでチームで仕事をすることにしました。

JIROさん:社員として雇って、みんながうまくなっていくことで、自分の持っている領域の一部を託せるっていう人が増えてくると、僕もどんどん新しい表現に挑戦できるようになるから。それはやっぱり、時間をかけてしっかり築いていかないとできないことなんです。

大谷さん:JIROは特殊メイクの専門学校も作ったからね。もう何年やっているんだっけ?

JIROさん:10年くらいですね。そこから優秀な若手と出会い、自分が学んできたことを教えていって。業界を底上げできたら嬉しいなっていう。

ーー今後はどういう人と仕事をしたいですか?

JIROさん:僕はコラボレーションが好きなんですよ。境界線があるなかで、ある程度、上の方を極めた人たちとコラボレーションしたいです。自分にはない感覚があると思うので、一緒に何かを作っていくプロセスの中で、刺激を受けたい。

大谷さん:若い人! 特に売れたくて、売れたくてしょうがない人が企画をうちの会社に持ち込んできて、「これ作りたいんです」っていうのを何とかしたいですね。クライアントさんを見つけるところから、作り方までを含めて。

JIROさん:大谷さん、面倒見がいいですからね。

大谷さん:自分や自分の会社のことしか考えていなかったり、いろんな人に支えられてできたものを自分の手柄みたいに言ったりすることが嫌なんです。だからJIROが作った作品も、「JIROが作りました」と声を大にして言いたい。ここで紹介した仕事も、そう。才能のある人に惚れるタイプなんです(笑)

PROFILE

株式会社メディアコンシェルジュ(Media Concierge Inc.)

2001年設立。カンヌ国際広告祭金賞をはじめとする、世界中の広告賞の受賞実績を持つ。OOHやアンビエントなど、既存の広告媒体以外の領域を中心とした広告の企画やディレクションを行っている。

PROFILE

自由廊

2002年設立。特殊メイクや造形制作で独自に培った高い技術力と発想力を武器に、映像制作以外の業界も含めた幅広い分野でアートワークを行っている。2008年には特殊メイクスクールであるAmazing School JURも設立。

写真・下屋敷和文 文・井上結貴 編集・紺谷宏之

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