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三浦崇宏の「人生はPRじゃねぇんだよ!!」

#3 お前ら時代に忖度してる場合じゃねぇぞ!!−あるいは『期待経済』という考え方

「いつだって時代は過渡期だし、キャンパスは真っ白なんだよ」って伝説の電通マンが言っていたそうです。(『エンタメの夜明け』より)

2018年1月5日の深夜3時。会社の新年会の二次会のカラオケでTHA BLUE HERBのラップをがなり立てた後、スナックをそっと抜け出して、夜明け前の一際冷たい空気に耐えながら、オフィスで一人この原稿を書いています。
ぼくたちクリエイターという人種は、いつだって年明けよりも、夜明けが怖い。
2017年の1月5日にGOという会社を立ち上げ、丸一周年。(最初、資本金が55万円だったのは内緒です)当時、大手の広告代理店を辞めてスタートアップを起業することに、多くの人が、「やめたほうがいい」「バカなの?」「痩せろ」なんて時代を忖度したアドバイスをくれました。その一方で少なからず、「期待している」「面白そう」「metoo」と言ってくれた人たちもいます。この先、ぼくが彼らへの感謝を忘れることはないでしょう。期待されることが一番ありがたい。そんな時代が来ています。

始まったばかりの2018年、社会の変化がますます加速していく中で、ぼくたちクリエイターやPRの仕事はどんな風に変わっていくのだろうか。迂闊に『僕たちの時代だ』なんていうとビール瓶で殴られるかもしれません。それでも、ぼくは1985年の長州力ばりに『俺たちの時代だ』と声を大にして言おうかと思っています。先日、SNSでコピーライターの知人が、「ぼくらの仕事ってもうなくなっちゃうのかも」なんて弱気なことを言っていて、本当にびっくりしました。広告業界のことを視野が狭い人は『沈みゆく船』だと捉えるけど、視野が広い人は『大航海時代』だと捉えるはず。自分のいる場所を船と見るか、海と見るかで、解釈も行動もだいぶ変わりますよね。

時代の変化でいうと、『評価経済』のムーブメントはさらに広がっていくでしょう。「貨幣経済」すなわち、お金(貨幣)を仲介として、モノやサービスが行き交う社会システムに対して、「評価経済」とは他者からの「評価」を仲介として、モノやサービス、あるいはお金が交換される社会システムのことです。SNSの社会インフラ化と、金融のIT化によって実現した新しい経済のあり方です。
例えばあなたが叶えたい夢や実現したいプロジェクトがあったとする。今あなたの手元にお金がなかったとしても、その目指す未来やこれまでの実績に対しての評価があれば、きっと、多くの人がお金や労力を提供することで、その夢やプロジェクトは実現します。
ニュースで話題になったホリエモンロケットの打ち上げは、クラウドファンディングによって多くの人々からの募金を集めて実現しました。このように貨幣よりも、他者からの評価が価値を持つ社会はすでに実現しつつあります。
タモリさんはかつて「財布を持ち歩かないんですよ、俺には信用があるから」とブラタモリで呟いていましたが、今となっては評価経済を端的に表した名言だと思います。
また、似たところでいうと、クラウドファンディングを活発に行なっている西野亮廣さんは『信用経済』という言葉をよく使っています。
さらに、メタップスの社長である佐藤航洋さんは、『価値主義』という考え方を提唱しています。
VALUやタイムバンクといった、インターネットを使った新しい経済サービスも、このムーブメントによってうまれたものです。

目に見えるモノやお金よりも、目に見えない“評価”や“価値”が重要視される時代になりつつあります。ぼくはこうした今の社会の変化をざっくりまとめて『実態経済から期待経済へ』の変化と捉えています。この変化の中で、クリエイターやPRの仕事は今まで以上に重要性を増していくでしょう。

2017年の4月に、アメリカのテスラが時価総額510億ドルを記録し、世界の自動車販売(を収益とする)企業でトップになりました。2位のゼネラルモーターズは時価総額480億ドル。創業は1908年。2003年に創業したテスラはたった14年で100年以上続いてきた大企業の価値を、文字どおり電光石火で追い抜いてしまいました。しかし、この時テスラの年間の売り上げは70億ドル、一方ゼネラルモーターズの年間売り上げは1800億ドル、その差は20倍以上。どうして、販売規模でははるかに劣るテスラが、企業価値においてはゼネラルモーターズを上回るのか。答えは、今の社会においては企業価値の源泉が『過去の実績』から『未来への期待』に変わったからです。
アントニオ猪木はかつて「一寸先はハプニング」と語りましたが、もはや1分先はハプニングかミラクルかもわからない時代が始まっています。AIやブロックチェーンといった社会基盤そのものを変える新しい仕組みが普及しつつある中で、未来の社会はどんな風に変わるかわからない。アランケイの「未来を予測するいちばん確実な方法はそれを発明することだ」という言葉が思い出されます。
今、価値があるのは、未来を発明する……社会からそんな風に期待される企業なのです。

そんな『企業の価値は未来への期待が9割』の時代は、まさにクリエイターやPRの時代でもあります。クライアントの企業への『期待』を生むために、彼らが目指している未来を、世の中にわかりやすく翻訳し、かっこよく描き、多くの人々に届ける。これはブランディングであり、PRである。つまり、僕たちの仕事に他ならないからです。

もうすぐ2018年1月5日の朝が来ます。評価経済、価値主義、そして期待経済、どんな風に名付けたって構いません。今、轟音をあげて社会が変わり続けていることは確かです。技術とその意志さえあれば、ぼくたちはその変化のど真ん中に立つことができる。こんなにワクワクすることはちょっと他にないと思います。始まったばかりの2018年、忖度なんてしてる場合じゃない。自分自身と、これから起きる社会の変化すべてに『期待』し続けよう。THA BLUE HERBのリリックを思い出すまでもなく、『未来は俺らの手の中』なのだから。

PROFILE

三浦崇宏

The Breakthrough Company GO代表取締役 PR/Creative Director 博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。『表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事』が信条。 日本PR大賞・CampaignASIA Young Achiever of the Year・ カンヌライオンズクリエイティビティフェスティバル 2013 PR部門ブロンズ・2016 ヘルスケアPR部門ゴールド・2017年 プロダクトデザイン部門ブロンズ ACCクリエイティビティフェスティバル2017クリエイティブイノベーション部門グランプリ/総務大臣賞、同インタラクティブ部門ブロンズ

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